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カントールの対角線論法と無限

数学の入門書を読んで、無限について考えさせられました。無限というのは不思議なもので、たとえば自然数(1,2,3,4...)の集合と偶数(2,4,6)の集合は普通に考えると偶数より自然数の集合の方が2倍ほど多いように感じますが、両方とも無限と考えると、自然数と偶数は一対一で対応します。

1  2  3  4  ...
2  4  6  8  ...

これを数学では、自然数の集合と偶数の集合は濃度が同じ、と言います。

常識で考えると理解が難しいですが、この常識を超えた不思議さが無限の魅力といえるでしょう。自分を含めた一般の人は、無限に続く限り自然数と偶数は一対一で対応する、イコール濃度が同じ、と理解するしかないようです。

上記のような軽い気持ちで納得していると、自然数と0以上1未満の実数も濃度が同じと言われても驚かないですが、実は自然数よりも0以上1未満の実数(有理数と無理数を合わせた全体)のほうが濃度が高いらしいんですね。これを証明してみせたのが、カントールの対角線論法です。

カントールの対角線論法がどのように証明してみせたのか、順を追って説明してみます。たとえば次のように全ての自然数と0以上1未満の実数を対応させることができたと仮定しましょう。ちなみに、実数とは0.5や1/2といった有理数と、ルート2やπといった無理数(分数で表せない数)を合わせたものです。

自然数 : 実数
1 : 0.1987...
2 : 0.8341...
3 : 0.7387...

この対応表に、さらに追加できる実数があったとしたら、この対応表は破綻していることになり、一対一で対応しないことになります。

それでは、対応表にはない、0以上1未満の隠れた実数を見つけてみましょう。
無限に並べた対応表からどれにも当てはまらない実数を見つけるのは無限に大変ですが、簡単な方法で見つけることができると証明することができます。

先ほどの実数の並びですが、左上から右下に向かう1本の対角線があるとします。

0.1987...
0.8341...
0.7387...
...

この対角線上には、上から"1"987...、8"3"41...、73"8"7...と無限に並んでいます。この無限の数を次の規則で変換します。

規則1 偶数のときは、値を1に変換する。
規則2 奇数のときは、値を2に変換する。

すると、次のような無限の実数が得られます。

0.221...

この値は、1行目の実数とは小数第1位が異なり、2行目の実数とは小数第2位が異なります。以下同様で、対応表を変換した実数は対応表にはないことが証明できます。

というのがカントールの対角線論法を使った、自然数と0以上1未満の実数が一対一で対応しないことの証明です。

とはいえ、無限の表が完成した後に実数を追加しているように感じるので、イマイチ腑に落ちません。といっても、素人が心配するまでもなく、カントールは矛盾なく証明しているそうなので、ちゃんと調べるのが無理な感じであればこのまま受け止めるのが良しです。

無限集合の濃度について補足です。自然数は可算濃度といって、1、2、 3 … と順番に数えていくことができます。同様に、整数、偶数、奇数、有理数はいずれも可算できます。
実数は連続体濃度といって、対角線論法によって加算濃度と濃度が違う(連続体濃度 > 可算濃度)ことが証明されています。

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